八月某日の夢

その古い家の主人は異常な収集癖があるらしく多種多様な本や雑誌、がらくた等で古い家いっぱいが埋め尽くされていた。主人はおそらく慕われている人なのであろう。数人の様々な人がそれらの整理を手伝っていて、中には知った顔もいるようだがはっきりとはしない。
「こういった雑誌や譜面は、今見ると間違いも多いんだけどそれさえ気をつければなかなか面白いんだよね」と、薄い古い音楽雑誌を棚に並べながら体格のいい男の人が言う。
「音楽関係でもハードカバーはこっちに持ってきて」と、部屋の反対側では対照的に細く神経質そうな人が言っている。
とにかく雑然とした家で、家いっぱいに未整理の品が詰まった段ボールや木箱が無造作に置かれ、細々としたものが押し込められている上、部屋中にある棚にも沢山の小箱や瓶などが並んでいて、やはりそれらの一つ一つにもまるで無関係な小物が押し込められている。特に貴重なものがある訳でも無いのに、わたしたちは熱心にそれを分類して、詰め直し、並べ直している。さてこの家の主人はといえば元より整理などする気も無いけれど、やりたいのであれば好きにやってもらって構わないといった体で椅子に腰掛け、愉快そうにわたしたちの作業を眺めている。
作業と言っても、様々な人が入れ替わり立ち替わり、思い思いにやっているので全く統率なども取れず効率などは誰も気にしていない様子で、むしろ小声での会話を交わしながら、時間をかけてこの場所で楽しんでいる様だ。
部屋の一角、窓のある場所には丸められた絨毯や毛布などが置かれていて、気の向いた人はそこに寝転んだり座ったりして休息を取ったりしている。或いは全く作業などせずにそこにい続ける者もいるけれど、別に誰も気にしない。わたしもそこで、何か柔らかいものの詰まった麻袋にもたれかかりちょっと休むことにした。砂糖なしの熱い紅茶を飲んでいると、誰かにわたしの片手を握られているのに気がついた。が、不思議と不快感は無くその見知らぬ人に全幅の信頼を置いていることに自分でも少し、ほんの少しだけ戸惑いを感じていた。そして心地よい疲れの中、棚に置かれた様々な色の布切れの詰まった瓶を眺めながら、夢の中で眠った。

目が覚めると夏の朝の雨が降っていた。



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